手網の中にハンドピック済みのコーヒーの生豆を入れます。 それを持ってガスコンロの前に立てば、すべての準備は完了です。
では、焙煎を始めます。 生豆を手網にセットしたら、ガスコンロに点火します。 始めは、豆の中心部と外側の火の通り方を均一にして、焙煎ムラを押さえるための水分を抜きます。 水分抜きは、手網を火から25cm位離して軽く揺すり続けます。 時間は10分から20分位です。
水分抜きを始めた生豆からは、少々生臭い臭いがします。 始めての焙煎の時には、この豆は腐っていると思うかもしれませんが、心配しないで下さい。 焙煎が進むにつれて、ちゃんと生臭さは消えます。 この水分抜きは、生豆の生臭さを抜く過程でもある事を覚えておいて下さい。
生豆から水分が抜けてくると、色が変わってきます。 始めは黄緑色又は緑色をしていますが、だんだんと黄色味を帯びてきます。 この頃になると、少々生臭い臭いが消え、少しずつ香ばしさを帯びてきます。
この頃になると軽く揺すり続けている疲れを感じるようになりますが、手を抜かないようにしましょう。 ここで手を抜くと、生豆の片面のみ水分抜きされている状況に陥るかもしれないからです。 また、コーヒー豆の皮を飛び散り始めます。 この皮が焦げるとコーヒーに焦げ臭い臭いが移ってしまうので、取り除く必要が出てきます。 この皮を取り除くために手網を少々強く揺すります。 すると、ガスコンロの火による上昇気流が、飛ばしてくれます。 全体が茶色となる頃がライト・ローストです。 しかし、まだ飲み物となってはいません。
この頃になると、ああコーヒーかな、という程度の香りが始まります。 全体がシナモンスティックのような色を帯びてきたら水分抜きは終了です。 この時点がシナモン・ローストとなります。 しかし、まだまだコーヒーとして飲める代物ではありません。 本焙煎に取り掛かります。 本焙煎では、手網からガスコンロの火までの距離を15cm位に縮めます。 当然火力が強くなるぶん、かなり早いスピードで手網を揺する必要が生じます。 ここで手を休めると、片面だけが焦げている状態の焙煎ムラが生じてしまいます。 蓋を確実に閉めておいて下さい。 熱い豆が飛び散って、火傷の原因となります。
本焙煎に入ってしばらくすると、パキッ!パシッ!という高い音を弾ませながら、1回目のはぜが始まります。 甘みを帯びたコーヒーの高い香りが広がります。 1回目のはぜが全体に広まり始めたら、手網を火から遠ざけていきます。 距離は25cm位に戻ります。 距離を開けても、手網を揺する手を休めないで下さい。 コーヒー豆の水分が抜け、全体に熱気を帯びているために、かなりのスピードで焙煎が進行していくからです。
1回目のはぜが終了した辺りが、ミディアム・ローストからハイ・ローストとなります。 コーヒーショップで売られている豆は、この辺りが多いです。 コーヒー豆の甘さや酸味が十分味わえます。
ここからしばらく揺すり続けると、先ほどの香りがだんだん落ち着いてきます。 普段イメージしているコーヒーの香りと、焙煎中のコーヒーの香りがだんだん一致し始めます。 この辺りがハイ・ローストからシティ・ロースト辺りとなります。 日本国内での一般的な焙煎具合で、苦みと酸味のバランスが味わえます。
このまま揺すり続けると、2回目のはぜが起きます。 1回目の音と違い、低いミシッ!ピシッ!という音になります。 それとともに煙が出始めます。 2回目のはぜが起きている状態がフル・シティ・ローストです。 苦みやコクが本領を発揮します。 対して酸味が少なくなり、香りも押さえられてきます。
ミシミシというはぜの音が収まると、すでにコーヒー豆には光沢が見られます。 これはコーヒー豆の油脂成分が表面に出てきたためで、コーヒー豆の品質には問題はありません。 この段階がフレンチ・ローストとなります。 このローストでは、カフェ・オレ等、ミルクやクリームとコーヒーの苦みを伴う飲み物に使用されています。
ここからさらに焙煎を進行させると、エスプレッソ等で使われるイタリアン・ローストとなります。 ここまで来ると、豆の持つ個性が失われてしまいます。
これ以上の焙煎は、コーヒー豆を炭に変換するだけとなります。 終了して下さい。 コーヒーの焙煎を終了した後は、急速に冷却しなければいけません。 ドライアー等の送風を使って冷やしましょう。
焙煎されたコーヒー豆の取扱には注意してください。 コーヒー豆は、生鮮食品です。
コーヒーの皮が周囲に飛び散ります。 ガスコンロの周囲だけでなく、頭の上(髪の毛の上)、鼻や眼鏡の上なども注意して片付けて下さい。 また、臭いも強く残りますので、風通しを良くしてしばらくは耐えましょう。 検討を祈ります。