[著述 15th/Sep/2000]

珈琲通の独断コラム 第1回

[コーヒー通ってブラックなのか?]

はじめに

コーヒーというものは、何故か大量の誤解とともに広まっています。 で、以前からコーヒー通を自称してしる私としては、なんやそらと突っ込みたくなる場合に多々遭遇しています。 そこで、良くある誤解や良く質問される事項を中心に取り上げ、解説する場が欲しくなり、取り合えず、コラムを始めてみました。

ただし、ここの内容は私個人の体験や知識により、ある意味独断的な判断をします。 読者の方々の反論や質問などは随時以下のメールアドレスで受け付けています。 また、こんな題目を取り上げて欲しいという要望なども随時受け付けています。

coffeemaster@coffee2.com

[コーヒー通ってブラックなのか?]

まず、第1回の題目としては、この題材を取り上げさせていただきます。 これは、コーヒー好きな人間はよく尋ねられる題材であり、何故か意見の度合いが分かれる内容でもあります。

で、始まったばかりですが、私の性格上いきなり答えから始めさせていただきます。

[答え]まずいコーヒーをブラックで飲むのは、拷問の一種です。

という訳で、どんなコーヒーでもひたすらブラックで飲むべきという人間は、全くコーヒーの味がわからない人間なのです。 つまり、彼(女)はどこかで摺り込まれた知識に従って、形式的にコーヒーを飲んでいるのであって、それ以上でもそれ以下でも無いのです。 コーヒーはあくまで嗜好品であるので、美味しく飲むのが本来のあり方です。

また、まずいコーヒーというのは、健康上にも良くないことが多いのです。 例えば、コーヒー豆の中にも人体に有害な成分があり、下手にコーヒーをいれるとこれらの成分が出てしまいます。 他にも、長い間コーヒーを保温し続けていると、熱変性によりコーヒーの成分が変わり、同じく人体に有害な成分がでるそうです。 (詳細な成分名などの知識は忘却) ということであれば、自己防衛のためにも、これらのコーヒーにミルクをいれて胃腸にコーティングを施すのも当然のことなのです。 で、人体に有害なコーヒーの見分け方は、えぐみが有るか無いかであり、要するにうまいかまずいかであるのです。

では、何故このような誤解が生まれたのでしょうか? 私が推測するには以下の原因が挙げられます。

まず、アメリカかぶれという点についてですが、アメリカンコーヒーから来ています。 アメリカでは、日本人がお茶をがぶ飲みするように、コーヒーをがぶ飲みしています。 しかし、毎回砂糖やミルクを入れていたら太ってしまうので、薄目をブラックで何度もという風習が出来上がりました。 これが、コーヒーの本場アメリカではブラックで飲むという知識につながり、古き時代のアメリカかぶれ=通という構図に当てはまったのでしょう。

続いて、もっとも良く言われている理由ですが、日本人の素材そのものの味を好む特性があります。 コーヒーにミルクや砂糖を入れていては、コーヒー本来の持つ味が解らなくなってしまいます。 で、逆説的に、コーヒーにミルクや砂糖を入れる人は、コーヒー本来の味が解らない人という発想にも結びついています。 また、コーヒーは苦味がうまいのであり、砂糖の甘さを好むのは子供であるという一部の人間の意見も横行していました。 また、最高のコーヒーはやっぱりブラックが一番美味しいです。 で、コーヒー通が最高のコーヒーをブラックでおいしそうに飲む所から、逆説として、ブラックで飲むのはコーヒー通となった可能性もあるでしょう。

また、缶コーヒーやインスタントコーヒーの普及もこの傾向に拍車をかけています。 これらのコーヒーとレギュラーコーヒーとの比較により、うまいコーヒーはどちらかという知識が広がります。 昔は缶コーヒーにはたっぷりのミルクと砂糖が入っていて、インスタントコーヒーはミルクや砂糖無しで飲むのは非常に厳しいものがありました。 対して、レギュラーコーヒーは昔からブラックでも飲むことができるのです。 そのため、コーヒー通はレギュラーコーヒーを、さらに缶コーヒーでは味わうことのできないブラックでコーヒー本来の味をという構図ができます。 つまり、一部の人間の楽しむもの=通という論法です。 近年は、技術の向上により、これらもブラックで飲める水準に向上してきているそうですが、それ以前の時代にこのような認識ができてしまっていたのです。

こうして、コーヒー通はコーヒー通はブラックで飲むものという既成概念ができあがり、場合によってはえらい目に遭遇するのです。 喫茶店において、変なコーヒー(?)を得意そうにブラックで飲む人間を見るたび、コーヒーの味がわかる人間の少なさを痛感しています。 時には、こいつは砂糖水と塩水の区別がつくのか、と思うほどの人間もいます。

さて、ここまで記述すると、私はコーヒーにミルクや砂糖をいれるのを擁護しているようにみえます。 しかし、実際には、私のいれたコーヒーにミルクや砂糖を入れることは決して許される事ではありません。 何故なら、私はブラックで飲むコーヒーを入れたのであり、ミルクや砂糖をいれるとまずくなるという確信を持っているからです。 まずくされた状態で、自分のコーヒーを評価されること自体が許せないのです。 多分、私のような人間は意外と多いと思います。 外では極力コーヒーを飲まず、飲んでもたっぷりのミルクや砂糖を使っているものの、自分のいれたコーヒーは別物扱いをするのです。

さて、ではカフェオレ好きの人間はどうすべきなのでしょうか? 最初からカフェオレを飲みたいと注文をつけるのが一番無難です。 他には、ブラックで一口飲んだ後に、ミルクを入れるという方法もあります。 つまり、相手のコーヒーを自分なりに評価した上で、そのコーヒーを自分なりにアレンジをして、最終的には自分なりの最も楽しいコーヒーを楽しむという事です。

コーヒー通の入れたコーヒーに、いきなりミルクや砂糖をいれるのはマナー違反と覚えていただけるとうれしいです。

以上、コラム第1回を終わります。


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